2024年4月18日木曜日

おとなりの4歳児


杉並区のメゾネットタイプの家に住んでいる。
メゾネットとは一階と二階を専有していて、おとなりと壁を共有した平屋のような造りになっている建物。
三世帯の戸建てをくっつけたような状態の我が家は通り側。隣にはお父さんとお母さん、子どもが二人(小学生の男の子と保育園に通う4歳の女の子)が暮らしている。
こちらのお宅の子どもがはしゃぐ声や、親御さんに叱られている声がときどき共有した壁から聞こえてくる。当然、こちらが喧嘩する声もあちらに筒抜けだ。
お互いに騒がしいのだけれど、重大な共通点がいくつかあって理解し合えるのでとても仲良くさせてもらっている。
あちらさんも飲食業を自営で営んでいて、音楽もやっているので、夜型の生活や楽器の音もとても寛容にしてもらっている。

おとなりさんが出かけるときは必ず家の前を通る。晴れている日は僕はたいていは窓を開けっ放して網戸にしているので、子どもたちが出かける様子を見ている。喋る声も聞こえる。ある日は息子くんが学校でお友達のズボンを下ろすいたずらをしてお母さんが呼び出されたということで、こっぴどく怒られていた。あるときは虹色のレインコートを頭から被った娘ちゃんが雨にもかかわらず元気に保育園での出来事をお母さんに伝えていた。とても人懐っこい子たちで、ある日「おじさん何してんの?」と話しかけてきたことから交流が始まり、毎日からかわれている。
「おじさん」ってそれまでほとんど言われたことがなかったけれど、この子達に言われて自分が中年の風貌をまとっていることを認めた。お母さんが「お兄さんでしょ」とたしなめていたのでお兄さんで定着してくれないか、という淡い期待もあったけど、ついには僕の中でもオジサンで納得した。
 お父さんの帰りが遅いので、早目にお母さんが経営するカフェの営業を切り上げて子どもたちの送り迎えやお世話をする、というオペレーションになっているようで、お手伝いとはいかないまでも、ときどきうちで預かって面倒を見たりしている。この間はメイク道具を使って娘ちゃんに顔に落書きをされまくった。これが気に入ったらしく、この4歳児はその後も僕の膝に乗ってきて顔に落書きをしてはケタケタ笑っている。3月はお兄ちゃんの誕生日でお母さんから苺のショートケーキが好きと聞いてホールのケーキをプレゼントした。このときからお兄ちゃんは僕のことをオジサンとは呼ばずに「あつしさん」と呼ぶようになった。末恐ろしいヤツめ。
 今日も、お母さんが慌ただしくしていたので娘ちゃんを預かっていた。ボール遊びをして、全身を使って「とあーっ!」とボールを投げたのになぜか後ろに飛んでいったことに二人して大笑いし、外にハンモックを出してゆらゆら揺らしながら時間を過ごした。はちきれんばかりの笑顔になってくれることが嬉しく、遊んであげているのではなく、遊んでいただいているような気持ちにもなった。
ハンモックに仰向けになって月を見て「月って食べたらマズそうだよね」と言ってみたり、「おじいちゃんこないだ死んじゃった」とケロッと言ってみたり、抽象的な詩のよう。散漫だけどハッとさせてくれる。
 子どもってなんて素敵で尊いんだろう。

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